昨年劇場で観て、鎖骨もまだ見えてこない少女体形のシム・ウンギョンがなんとも可愛く、ゴム鞠のように飛び跳ね魅力的に演じその発想も反応も話し方も観ていてとても面白く楽しかった映画「怪しい彼女」面白いのは確かなんだけどいったいどこにこんなにはまってしまったんでしょうか。
「もし人生をやり直すことができたら」
“突然50歳も若返って何のしがらみもなく再度人生を歩めたら”なんて荒唐無稽な設定なんだけど、主人公の 選択の余地もなく歩んできた人生‐生きてきた韓国の社会・時代のこと、韓国・韓国の人が通ってきた過酷な背景が挿入
描かれることによってキャラクターがしっかりと確立し、ただ面白いとか可愛いだけでなく深みのある映画になったんだなぁと気づきました。
名優ナ・ムニ扮する(高齢の方の)主人公自慢の息子は国立大学の教授で老人問題の専門家。家では、ついついひとこと言ってしまう嫁姑の関係が深刻。大学を出たものの高い失業率の韓国社会で就職できず家にいる孫娘、大学には通っているけれど何をやりたいのかわからずにもやもやしたままの孫息子。そんな家庭内の問題・いざこざが、お嫁さんの緊急入院という事態で急展開、一気に趣が変わります。
(お嫁さんが)退院したら迎えに行きますと言われた施設入所を控え、たまたま目にした写真館で自分の遺影を撮っておこうと思い立ち“青春写真館”という名前の写真館に入ります。「私が50年若返らせてあげますよ」という写真館の主人の言葉を背中に聞きながら「初めて白粉をはたいたよ」と口にしながら紅を引く。フラッシュがたたれた後シム・ウンギョン扮する若い主人公に代わり一気にテンポアップし楽しく面白い展開に。
我が身に起こったことを解決も誰に相談することも家に帰ることもできないままに、若くして結婚した相手は出稼ぎ先で事故死
生まれた忘れ形見を育てる時の数々の辛酸の日々とは別の生活(人生)が始まります。誰にはばかることも誰のためにと考える必要もなく一つ一つ“初めて”体験しながら。もう長いことなかった胸の高鳴りを感じるような生活も訪れます。
映画終わりの方で、それまでいくつかのシーンで描かれていた彼女の苦労の日々を、息子の口から語る切なくも感動的なシーン「くず野菜を拾って食べ、魚臭い仕事をしない人生 子どものために鬼になることもない短命な夫と結婚し 親不孝の息子を生まないで 」。それを聞いた若い姿の彼女は定まった思い「私は生まれ変わってもまたあんたを生むよ。~全く同じ人生を選ぶよ 」を口にします。
色々書いても伝えきれないでしょうし、観る楽しみをなくしてしまうかもしれませんので紹介はこれくらいにします。受け取り方も違うでしょうから機会がありましたら是非ご自分の感性で観ていただけたらと思います。
最後にもう一言。
全て納得の上で元の人生・自分に戻るとき、ナ・ムニ扮する彼女が口にする「良い夢を見たよ。こんな良い夢は生まれて初めてだ。」を聞いた時、若い彼女も年取った彼女のことも思いながらなぜかホッとする気持ちを感じました。
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