ドキュメンタリー「放射線を浴びたX年後」をようやく見ることができました。
3月の堀潤さんの講演で耳にした“タイムライン”というとらえ方のことが頭にあって作品名にある“~年後”という言葉で前から観たいと思っていた一本です。
この作品も沖縄朝日放送の人たちが作り上げた「標的の村」と同様に、もとは地方のテレビ局(愛媛県の南海放送)の人たちによるドキュメンタリー番組だったんですねぇ。ご多分に漏れず今テレビ局もどんどん正職を切って派遣に置き換え、番組そのものの外注も進めていますので、じっくり時間をかけて、手間も暇もかかる質の高い作品を作るのは大変だったと思います。規模・人員が多ければできるというものではありませんが、そんな状況の中地方局の少ないスタッフの中でこのような作品が作り上げられたというのはいいものをつくろうとする報道にかかわる人達の心意気、高い志を感じます。
初めて知る事大切な事もあり、それだけにもしこの作品・調査がなかったら知られないままだったのかも知れないという怖さを感じます。そう考えると、このドキュメンタリー作品、地道な活動がいかに大切な事だったのかということを再認識しています。
さて作品について。
放送局の人が当時の漁船員を探してそして遺族にインタビューする模様とともに山下久寿さんが写っていました。山下さんは、多年にわたる調査によってビキニ環礁で被爆した漁船が第5福龍丸以外にも存在したことを明らかにして、それまで長い間もやもやと私に在った疑問を晴らしてくれた地元の当時は現役の高校の先生だった人です。山下さんとともに調査を重ねてきた周りの素晴らしい人たち、その調査の様子も映っていました。 山下さん達の調査の集大成としての「核の海の証言」-ビキニ事件は終わらない- にまとめられたこと、この本が焼津平和賞を受賞しそのことを伝える各種報道で示された文字情報を、このドキュメンタリーは映像で見せてくれたのです。
貨物船もこの海域を通り被爆していることが紹介されています。 事実を示されれば確かに、広い海域に漁船は第五福龍丸だけ、船は漁船だけ、いたのは日本船籍の船だけだったと限定するほうがおかしいですものねぇ。
広島・長崎以後も繰り返された血液製剤やc・b型肝炎そして福島第1原発問題等での隠匿のパターンはここでも同様。日本 厚生省・政府はないと言っていた被爆漁船名と乗組員の調査結果がアメリカから出てきてそれも映像で紹介されています。
実験後の放射能汚染は、わずかの期間にビキニの実験区域を超えて拡散し日本にまで到達、海流や大気の移動によってアメリカ大陸をも汚染してしまったことも紹介されています。怖いのは、アメリカ合衆国・軍・関係部署によってこのことが予測されていて調査体制が進められていたということ。おそらくはアメリカ自国民も知らされないままに事が進んでいたんだと思います。 このあたりのことは「ここまでの広がりを予測できなかった」と言い訳されるよりもはるかに恐ろしさを感じます。
被爆した人たちの、どう比較しても正常範囲を逸脱しているガンの発生・心臓疾患などによる早すぎる死が数々の実例で示されていました。これを、タイムラインで俯瞰すると福島第1原発に関連してこれから起きることなのかといたたまれなくなりました。
*「標的の村」同様、このような良質の作品がこれからも作り続けられることを願っています。
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